模倣犯(下)宮部みゆき 読了

isbn:409379265
僕は、どこかで殺人事件が起きて、主人公が謎解きをしていって最終的に犯人を明らかにする、いわゆる「推理小説」っていうのがそれほど好きじゃない。誰が犯人なのかを考えながら小説を読むのがイヤなのです。文学作品に対して、哲学的に(それほど高尚なものではないが)あれこれ考えながら読み進めていくのはいいんだけど。それに、推理小説はプロットだけが先行してて、物語として他の要素(主題とか)が希薄になってしまいがちだし。
で、この模倣犯ですが、正統的な推理小説のスタイルで書いても十分面白そうな題材を、宮部みゆきが彼女独特の味付けを加えて、さらに上質に調理した、という感じ。
普通の推理小説ならば物語の中心として描かれる殺人事件を、単なる「事件」ではなく現代社会の中で起きた一つの「現象」として捉え、社会の中の様々な角度からその事件を炙り出そうと描くことで、リアリティあふれる重厚な作品となった。
今まで読んだ宮部作品で一番面白かった。あと読んでない有名どころは『火車』とか残ってるけど。